「本当においしい珈琲豆はコスタリカにある!」。焙煎技師・田中の強い言葉に動かされて、茅乃舎の珈琲チームは、21時間かけて、中南米はコスタリカへと飛びました。
訪れたのは、有機栽培を営んでいるロス・アノノス農園。代表のリカルド・バレスさん、フェリペ・ロドリゲスさん、マルビン・ロドリゲスさんご兄弟の3人が笑顔で歓迎してくださいました。人懐っこい笑顔の3人からは、まるで家族の一員のように珈琲を愛しているということが伝わってきました。
驚いたことに、コスタリカに有機農法を広めたのは、ササキショウゴ氏という日本人だとか。1980年代に日本政府から派遣技師により、ボカシ肥料とEM菌を使った本格的な有機農法がもたらされ、それが今も続いているというのです。
ここで何よりも大切にしているのが、土づくり。農園の腐葉土などが積み重なった土壌は、足裏にふかふかと柔らかく、珈琲にとっても居心地が良さそうです。さらに、珈琲を直射日光から守るシェードツリーとして、アボガド、バナナ、オレンジ、レモンなどが混在している様子はまるで南国の果樹園のよう。
この農園では、すべてが循環していることを実感させられました。
堆肥作りに、珈琲豆の余った果肉を再利用しています。農薬を使用していれば、こうした再利用は到底不可能ですが、農薬をいっさい使用しないこの珈琲農園には、ムダにするものはひとつもありません。1ヶ月かけて作られる堆肥は、ほんのりあたたかく、味噌などの発酵食品に近い甘酸っぱい匂いがします。
さらに、農園に使う水は、近くの水源からとった伏流水だといいます。周囲を火山に囲まれたコスタリカの大地は、天然のミネラル分を含む火山灰土壌。雨水がしみ込むと、地中の岩石層が天然フィルターとなり、ろ過される一方で適度なミネラル分は残るという。なるほど、野菜しかり珈琲しかり、味わい豊かな農作物が穫れる条件がパーフェクトに揃っているのです。
待望の収穫風景を見せていただきました。茅乃舎メンバーも、見よう見まねでカゴを持ち、奮闘中。大粒で見るからに甘そうな生の珈琲豆は、かじると何ともいえない豊かな味わいが広がります。珈琲は果実なんだと改めて実感します。
ロス・アノノス農園の珈琲の最大の特徴は芳醇な香りにあります。「完熟というと赤というイメージがありますが、そこからさらに熟して糖度が増すと紫色になるのです。チェリーの表面が柔らかくなって、力を入れずにポロッと穫れる、それが完熟の合図。その見極めこそが私たちの技量なんです。」
コスタリカ特有の気候風土、珈琲を愛する人々、土壌と水。諸々の条件が奇跡のように整い、珠玉の味わいが生まれることを実感した旅でした。
“真摯な珈琲栽培への取り組みと、おいしい珈琲づくりに関わるすべての人々に敬意を表して”。記念の看板の前で、記念撮影しました。
コスタリカの珈琲の歴史
基幹産業でもある珈琲の歴史は、約200年。1948年に軍隊を放棄して以来、教育と環境保全に力を入れている。世界で最も美しく、幸運を運んできてくれる幻の鳥ケツァールを巡るエコツアーなど、豊かな自然環境で知られる国。国土の約25%が国立公園として保護されていることからも、コーヒーの精製過程においても環境に負担をかけない配慮がなされている。