有田焼の百年先をつくる人

 秋の深まりを感じる季節に、日本の磁器文化が生まれた場所、佐賀県の有田町を訪ねた。毎年、約百万人が押し寄せる「有田陶器市」の賑わいは遠く、それでも、町のあちらこちらに点在する窯元では、静かに黙々と器がつくられているのだろう。静寂の中に、ものづくりの活気が伝わってくる。いくつもの窯元が立ち並ぶエリアから、少し奥まったところに寺内信二さんが営む李荘窯業所はあった。

 有田焼の陶祖・李参平の住居跡に開業した窯業所は、寺内さんで四代目。長男として生まれ、必然的に跡を継いだという寺内さんだが、ある時までは、磁器が好きではなかったそうだ。混沌と過ごしていた二十代のある日、幼馴染であり、現在は人間国宝の十四代今泉今右衛門さんの家で、その意識を大きく変える出来事があったという。それは、当たり前のように食材が盛られた、初期伊万里との出合いだった。そこにあったのは、時を超えて伝わってくる人の匂い。ずっと昔の職人の完璧な手仕事――。その日から、〝自分は食べることの道具となる器をつくっているのだ〟という意識が、寺内さんのものづくりのベースとなった。

 それからというもの、食と器の関係性がもたらす計り知れない可能性を求め、そうそうたる料理人やシェフとオリジナルの器を生み出してきた。そして、有田焼の生誕四百年を機に、世界中のシェフのニーズに応える職人集団として生まれたARITA PLUS(アリタプラス)の代表として、世界を飛び回る多忙な日々を過ごしている。

  「産業としての有田焼は今が過渡期。次世代のために様々な仕組みをつくりながら、市場を先取りしていく新しい有田焼を創造したいと考えています」と語る寺内さんの瞳は、まっすぐ未来を見つめ、少年のように輝いている。次から次へ、伝統と革新を融合する器を生み出す寺内さんは、デジタルを取り入れたものづくりにも積極的に挑戦。「先人の真似をするのではなく、『お前たちの時代はいいなあ』なんて羨ましがられるものをつくりたいですね」とにっこりほほ笑んだ。

つくった方

寺内 信二さん
てらうち しんじ

1962年 佐賀県有田町に生まれる

1985年 武蔵野美術大学工芸工業 デザイン学科卒業

1985年 アイトー商品開発室入社

1988年 (有)李荘窯業所入社

ご紹介のお店

李荘窯業所
りそうようぎょうしょ

佐賀県西松浦郡有田町白川1-4-20

電話: 0955-42-2438

FAX : 0955-42-2104

MAIL: info@risogama.jp

URL : http://www.risogama.jp/

ショールーム(8時半~17時)

※土日祝はお問い合わせください。